電子工作でAIプロジェクトに取り組みたいけど、「配線が面倒」「ディスプレイの接続が難しい」と感じていませんか?
M5Stackは、ディスプレイ・ボタン・バッテリー・Wi-Fiを一体化した開発ボードです。ブレッドボードなしでAIプロジェクトを始められ、Grove互換コネクタでセンサーも簡単に拡張できます。
この記事では、M5Stackシリーズの選び方からAI活用プロジェクトの実践例まで詳しく解説します。
M5Stackとは
M5Stack(エムファイブスタック)は、中国のM5Stack社が開発するESP32ベースのモジュラー開発プラットフォームです。5cm×5cm(M5 = 5cm Module)のコンパクトな筐体に、マイコン・ディスプレイ・ボタン・バッテリー・スピーカーなどが収まっています。
Arduino/Raspberry Piと並び、2026年現在では電子工作の3大プラットフォームの一つとなっています。
M5Stackシリーズ比較
| 項目 | Basic V2.7 | Core2 V1.1 | CoreS3 SE |
|---|---|---|---|
| チップ | ESP32-D0WDQ6 | ESP32-D0WDQ6 | ESP32-S3(デュアルコア 240MHz) |
| RAM | 520KB + PSRAM 8MB | 520KB + PSRAM 8MB | 512KB + PSRAM 8MB |
| Flash | 16MB | 16MB | 16MB |
| ディスプレイ | 2.0インチ IPS(320×240) | 2.0インチ IPS タッチ(320×240) | 2.0インチ IPS タッチ(320×240) |
| カメラ | なし | なし | GC0308(0.3MP) |
| マイク | なし | SPM1423 | デュアルマイク |
| スピーカー | 1W | 1W | 1W |
| バッテリー | 110mAh | 390mAh | 500mAh |
| IMU(加速度/ジャイロ) | なし | MPU6886 | BMI270 |
| 価格 | ¥5,500前後 | ¥7,000前後 | ¥6,200前後 |
エッジAI用途のおすすめ: CoreS3 SE がESP32-S3搭載でAI推論性能が高く、カメラ・マイク・IMUが内蔵されているためAIプロジェクトに最適です。価格もCore2より安く、コストパフォーマンスに優れています。
Arduino/Raspberry Piとの比較
M5StackはArduinoやRaspberry Piと何が違うのか、メリット・デメリットを比較します。
比較表
| 比較項目 | M5Stack(CoreS3 SE) | Arduino Uno R4 | Raspberry Pi 5 |
|---|---|---|---|
| 価格 | ¥6,200 | ¥3,500 | ¥10,000〜 |
| ディスプレイ | 内蔵(タッチ対応) | なし(別途購入) | なし(HDMI出力) |
| Wi-Fi/BLE | 内蔵 | Wi-Fiのみ(R4 WiFi) | 内蔵 |
| バッテリー | 内蔵(500mAh) | なし | なし |
| OS | なし(ベアメタル) | なし | Linux |
| プログラミング | C/C++、MicroPython | C/C++ | Python、C++等 |
| AI推論 | TFLite対応(ESP32-S3) | 限定的 | PyTorch、TF対応 |
| 拡張性 | Grove/Hatモジュール | シールド | HAT、USB |
| はんだ付け | 不要 | 場合による | 不要 |
M5Stackのメリット
- オールインワン: ディスプレイ・バッテリー・スピーカーが一体化
- 配線不要: Grove互換コネクタでセンサーをケーブル1本で接続
- 持ち運び可能: バッテリー内蔵でモバイルデバイスとして使える
- 筐体付き: ケース設計や3Dプリントが不要
- 豊富なモジュール: M5Stack公式のUnit/Hat/Moduleで簡単に機能追加
M5Stackのデメリット
- GPIOピン数が少ない: Arduinoと比べてピン数が限られる
- カスタマイズ性: 筐体が固定サイズのため、大型プロジェクトには不向き
- コスト: Arduino単体より高い(ただしディスプレイ等を考慮すると同等)
- 日本語ドキュメント: Arduino/Raspberry Piに比べると少なめ
M5StackでできるAIプロジェクト
プロジェクト1: 環境モニタリング(温湿度+AI予測)
温度・湿度・気圧センサーのデータを収集し、時系列予測モデルで今後の変化を予測するプロジェクトです。M5Stackのディスプレイにリアルタイムでグラフと予測値を表示します。
仕組み:
- ENV IVユニット(SHT40 + BMP280)で温湿度・気圧データを取得
- 過去24時間分のデータをPSRAMに蓄積
- 軽量LSTMモデル(TFLite)で6時間先の温湿度を予測
- ディスプレイに現在値・推移グラフ・予測値を表示
- 急激な変化を検出した場合はブザーで警告
必要な部品:
| 部品 | 目安価格 |
|---|---|
| M5Stack CoreS3 SE | ¥6,200 |
| ENV IVユニット | ¥1,800 |
| Groveケーブル | 付属 |
| 合計 | 約¥8,000 |
応用例:
- サーバールームの温度監視
- 植物栽培の環境管理
- 室内の快適度モニタリング
プロジェクト2: ジェスチャー認識
CoreS3 SEの内蔵IMU(BMI270)を使って、手の動き(上下左右、回転)を認識するプロジェクトです。認識結果に応じてスマートホームデバイスを制御できます。
仕組み:
- IMU(加速度・ジャイロ)データを50Hzでサンプリング
- 1秒間(50サンプル)のウィンドウでデータを切り出し
- Edge Impulseで学習したCNNモデルで分類
- 認識結果に応じてMQTT送信 or BLE制御
必要な部品:
| 部品 | 目安価格 |
|---|---|
| M5Stack CoreS3 SE | ¥6,200 |
| (IMU内蔵のため追加部品なし) | ¥0 |
| 合計 | 約¥6,200 |
CoreS3 SEだけで追加部品なしにジェスチャー認識が始められるのが、M5Stackの最大の魅力です。
認識できるジェスチャー例:
- 上下シェイク → 照明ON/OFF
- 左右回転 → 音量調整
- 円を描く → モード切替
- ダブルタップ → 実行/確定
プロジェクト3: 音声制御IoTデバイス
CoreS3 SEの内蔵マイクで音声コマンドを認識し、Wi-Fi経由で他のデバイスを制御するプロジェクトです。
仕組み:
- 内蔵デュアルマイクで音声を取得
- MFCC特徴量に変換
- キーワード検出モデル(TFLite)で「ライトオン」「エアコン」「タイマー」等を認識
- HTTP/MQTTでスマートプラグやスマートリモコンに指示を送信
- ディスプレイに認識結果とデバイス状態を表示
必要な部品:
| 部品 | 目安価格 |
|---|---|
| M5Stack CoreS3 SE | ¥6,200 |
| スマートプラグ(SwitchBot等) | ¥2,000 |
| 合計 | 約¥8,200 |
ポイント: 市販のスマートスピーカーと違い、音声データがクラウドに送信されないため、プライバシーを重視する方に最適です。
開発環境セットアップ
Arduino IDE
最も広く使われている開発環境です。M5Stack公式ライブラリが充実しています。
セットアップ手順:
- Arduino IDEをインストール(2.x系推奨)
- ボードマネージャーにESP32ボードURLを追加:
https://espressif.github.io/arduino-esp32/package_esp32_index.json - ボードマネージャーから「esp32 by Espressif Systems」をインストール
- ライブラリマネージャーから「M5Unified」をインストール
- ボードを「M5Stack-CoreS3」に設定
TFLite追加:
ライブラリマネージャーで「TensorFlowLite_ESP32」を検索してインストール
PlatformIO
VS Codeの拡張機能として動作する開発環境です。ライブラリ管理やビルド設定が柔軟で、大規模プロジェクトに向いています。
platformio.ini の設定例:
[env:m5stack-cores3]
platform = espressif32
board = m5stack-cores3
framework = arduino
lib_deps =
m5stack/M5Unified
tanakamasayuki/TensorFlowLite_ESP32
monitor_speed = 115200
UIFlow(初心者向け)
M5Stack公式のビジュアルプログラミング環境です。ブロックを組み合わせてプログラムを作成できます。AI推論には対応していませんが、センサーデータの取得やディスプレイ表示の学習に最適です。
既存計算ツールとの連携
M5Stackプロジェクトでも当サイトの計算ツールが役立ちます。
- LED抵抗計算ツール: 外付けLEDを接続する際の抵抗値計算。M5StackのGPIO出力は3.3Vです。
- オームの法則計算ツール: 外部回路の電流計算に。Groveポートの最大出力電流に注意。
- 電源容量計算ツール: M5Stackのバッテリー駆動時間を計算。センサーやWi-Fi使用時の消費電力を考慮した設計に。
- 分圧計算ツール: 5Vセンサーを3.3V系のM5Stackに接続する場合の分圧回路設計。
まとめ
M5Stackは、ディスプレイ・センサー・バッテリーが一体化した「すぐ使える」開発プラットフォームです。
- CoreS3 SE がAIプロジェクトに最適(ESP32-S3 + カメラ + マイク + IMU)
- Grove互換コネクタでセンサー追加が簡単(はんだ付け不要)
- 環境モニタリング・ジェスチャー認識・音声制御など多彩なAIプロジェクト
- Arduino IDE/PlatformIOで本格的なAI開発
- **¥6,200〜**で追加部品なしにAIプロジェクトを開始可能
「配線が苦手」「すぐに動くものを作りたい」という方には、M5Stackが最適な選択肢です。CoreS3 SEとEdge Impulseの組み合わせで、エッジAIの世界に踏み出してみましょう。